過日、某漫画家さんが自死なさったことをニュースで知りました。謹んでご冥福をお祈りするとともに、ご遺族・関係者の皆さまにお悔やみを申し上げます。
漫画家さんが自死を選択する重いご決心に至るまでの心情はご本人にしかわからないことですが、ニュースなどの各種報道によれば、某漫画家さん原作によるテレビドラマの内容が原作者の某漫画家さんの「原作に忠実なものに」というご意向が無視されたことなどに起因しているのでは?と推測されています。
漫画・小説などのメディアミックスは頻繁に行われているものの、原作者さんのメディアミックス作品への関わり方や捉え方は両極端に思えます。
1.原作とメディアミックス作品は完全に別物として、作品の二次利用のみを許諾する場合。
2.原作の内容やセリフなどの細かな表現に至るまで、忠実な再現を求め、企画段階からアニメ化や実写化に関わる場合。
いずれにせよ、原作者さんたちが作品に込めた思い入れや、大切に紡いできたという自負はあって当然なものでしょう。
上述したような原作の「無断改変」をめぐる問題として想起されるのが、いわゆる「世田谷区史編さん問題」でしょう。
この問題については、当ブログに詳しいので、そちらをぜひ、ご参照いただければと思います。
某漫画家さんの一件や、「世田谷区史編さん問題」の一件は、著作者人格権を蔑ろにした結果、引き起こされた問題といえます。
著作者人格権は、作品や作者の「名誉」や「思い入れ」を保護し、原作者さんの許諾を得ず、無断で作品を改変することを禁止した法律で、著作権(財産権)と異なり、譲渡や放棄できない権利です。
こうした著作者人格権を蔑ろにして無断「改変」することは、原作者さんや作品に対するリスペクトが一切ないと思われても致し方ないと考えます。
しかも、世田谷区の場合、歴史修正を是とするような自治体にあるまじき人格権不行使を区史執筆者に強要をしているわけですから。
世田谷区のみならず、今後も悪しきモデルケースが当たり前にならないように法改正も含め働きかける必要があるように思います。
加えて世田谷区では、著作者人格権不行使を明記した承諾書にサインしなければ、執筆者との契約を破棄するといった強硬手段に訴えているのです。これでは、原作者(執筆者)の「名誉」を著しく毀損(きそん)し、書いた(描いた)文章や絵柄(図表などを含む)を原作者(執筆者)を無視して改変できることになってしまうのです。
従前に、発注元さんと原作者さんが十分な話し合いや意見のすり合わせを行い、原作者(執筆者)さんの不利益にならないようにすることが重要なのです。
あらためて、著作権や著作者人格権不行使などに関するより厳密な法改正の必要かあると思います。
今回の某漫画家さんの自死は、多くの問題を我々に問うことになりますし、某漫画家さんには、さぞや無念であったことでしょう。
(中脇聖/日本史史料研究会研究員)
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【編集部追記】漫画家・芦原さんの訃報に関し、小学館「第一コミック局の編集者一同」名で「声明」が出されました。
著作者人格権に言及しています。