御所巻(ごしょまき)―世田谷区史編さん問題―

御所巻とは、中世の異議申し立て方法のことを言います。世田谷区による区史編さん委員へのパワハラと著作権の問題についてのブログです。出版ネッツのメンバーが運営しています。

記者会見を実施~著作者人格権不行使の契約見直しを求める~

 2月27日、区民の会では世田谷区長宛てに契約の見直し等を求める要望書を提出。その後、成城自治会館へ移動し、記者会見を開きました。

発起人の一人である稲葉康さんは、「歴史学者著作者人格権不行使を求めることは、執筆と研究に対するリスペクトを欠き、区史への信頼性が揺らぐ。そのような区史のあり方は税金の使い道として不適切」と批判。そして、「セクシー田中さん」の原作者である漫画家の芦原妃名子さんが自死した件を挙げ、「著作者人格権をないがしろにすることは、著作者の命を奪うほど重い問題」と、訴えました。

 

また、世田谷区史編さん問題の当事者であり、編さん委員の委嘱を昨年23年3月に打ち切られた谷口雄太さんは、契約を拒否した理由を次のように説明しました。

「1点目は、学術的信頼性が担保されないから。世田谷区の中世吉良氏の専門家は私しかいないが、著作者人格権不行使に同意すると、私の書いた原稿を区が勝手に書き換える可能性がある。その結果、区史の内容はでたらめになってしまう。これに関連して、勝手に書き換えられた内容が私の名前で出てしまうと、私の研究者生命が脅かされてしまう」

 そして、「区民の会が発足したのは良識の現れ。著作者人格権は人としての尊厳を守る大切なもの。団結して問題の改善に取り組みたい」と語りました。

 

 会見に参加した区民の会の上杉みすずさん(「小さな蔵の隠し酒」主宰)は、「区には人権侵害にもあたる契約書を見直して、自治体史の手本となるような区史の編さんを強く要望する」と訴えました。

 

 最後に稲葉さんは、次のようにコメントして、区に対して「熟議」と誠実な対応を求めました。

「これは世田谷区だけの問題ではない。歴史研究者から著作者人格権を奪うやり方が、全国の自治体に波及することが恐ろしい。研究者の利益と区民の利益は一致する。学問に裏付けられた歴史認識が、自治体によって改ざんされる恐れがないこと。それが区民にとって必要なものと思っている」

 

 なお、要望書の回答期限は3月4日です。保坂区政が区民の声に真摯に向き合うか、問われています。

 

【追記】回答期限より1日遅れの3月5日、区から回答がきました。話し合いはしないという内容です。区民の会は、回答の内容を検討したうえで、再度申し入れをする意向です。