御所巻(ごしょまき)―世田谷区史編さん問題―

御所巻とは、中世の異議申し立て方法のことを言います。世田谷区による区史編さん委員へのパワハラと著作権の問題についてのブログです。出版ネッツのメンバーが運営しています。

7.15シンポの「感想」紹介と御礼

2023.7.15(土)、「歴史研究と著作権法―世田谷区史編さん問題から考える―」と銘打った緊急シンポジウムを開催しました。

 

世田谷区史編さん事業では、世田谷区は著作権を侵害した主体=加害者であるにもかかわらず、被害者(歴史学者)に対して「著作権譲渡(無償)」+「人格権不行使」を強要し、話し合いも拒絶して被害者の馘首を強行するという、前代未聞の行為に対する、歴史研究者・メディア・労働団体・個人らによる強烈な違和感と疑義が、開催の動機でした。

あわせて、世田谷区に対し多くの区史編さん委員(研究者)が「人格権不行使」強要に同意したことへの、社会・世間からの疑念も多数あったため、著作権について基礎から学ぶ機会となることも目指しました。

 

当日は炎天下、三連休の初日という状況のなか、当初の予想を大幅に上回る118名にご参加いただき、世田谷区史編さん問題の深刻さを再確認するとともに、文字通り「アツい」議論が展開されました。

 

以下、当日の参加者による「感想」(参加者アンケートに寄せられた声)を紹介します。また、それに対する主催者のコメントも付けています。

 

「満足度」は高評価

 

まず、シンポジウムの満足度は総じて高いもので、主催者・協力者(出版ネッツ)として安堵しているところです。

ついで、満足度の高さの理由は、多様な角度から切り込まれたことと、著作権について学ぶことができたこと、これらが大きかったようです。

世田谷区史編さん問題当事者、著作権法に精通する方々、歴史研究の専門家、他自治体史編さん問題(流山市史編さん問題)当事者、ジャーナリストなどが結集し、それぞれが世田谷区史編さん問題を歴史的・社会的・法的な「文脈」のなかに位置付けることで、問題の深刻さが浮き彫りとなったと感じています。

 

あわせて、世田谷区(区史編さん担当)の意見も聞きたいとの声もありましたが、区が「人格権不行使」強要について、自らの行為にまともな説明を示せていないことは、オオスキトモコさんの記事に詳しいので参照してください。

オオスキさんは「世田谷区の担当者が、私の質問に対して『回答できない』ことが、本件の対応において、公にできる論理的根拠がないことの証明になるように思いました」とまとめており、全く同感です。

 

https://petitmatch.hatenablog.com/entry/2023/07/10/094307

 

「感想」への補足説明

 

内容についての「感想」は、上記と重なる部分も多いですが、いくつか回答・補足します。

「『行政=学芸員=不当で非専門的で勝手な集団』という偏見があったように感じました」との感想がありましたが、これについてはすでにSNS上で当日の参加者複数が説明しているとおりです。

つまり、学芸員を貶める意図などまったくなく(それどころか当日は多数の学芸員=主催者の信頼する友人たちが参加していて)、あるのは、相手の権利を貶めた人々(世田谷区史、流山市史の編さん問題を巻き起こした者)と、それ以外の人々の差異だけです。それ以上でも以下でもなく、事実多くの参加者がそのように理解しています。

 

また、「歴史修正への危険性をはらんでいるとの主張はおおごとすぎるのではないか」との声もありましたが、歴史学者の多くが、本件、権力が歴史の書き換えを可能にする契約書を強要することにつき、「歴史修正」と発想するのは、過去を(から)学び、歴史学にたずさわるものとして、当たり前すぎることといわざるを得ません。

 

さらに、「世田谷区と話し合いを丁寧に継続されたらよかったのでは」と声もありましたが、話し合いを拒否しているのは一体誰かは、3時間にわたる本シンポのなかで、幾度となく説明があったとおりです。

 

「感想」に励まされた!

 

総じて、当日寄せられた感想=「生の声」は、力強いものが多く、主催者・協力者として感謝に堪えません。ありがとうございました。

しかし、課題があまりにも多いこともわかりました。第二回、第三回と、世田谷区史編さん問題から考えるシンポを続けていくことで、悪しき環境、陋習の改善に少しでも寄与していくことを目指していきます。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

              (谷口雄太)