御所巻(ごしょまき)―世田谷区史編さん問題―

御所巻とは、中世の異議申し立て方法のことを言います。世田谷区による区史編さん委員へのパワハラと著作権の問題についてのブログです。出版ネッツのメンバーが運営しています。

7月21日、世田谷区に団交申入書と「声明」賛同者一覧を提出

 2023年7月21日、当該の谷口雄太さんと出版ネッツ・トラブル対策チームのメンバー3人で、団体交渉申入書と「声明」、賛同団体・賛同者一覧が掲載された書面を持って世田谷区を訪問しました。事前に区にはアポを取り、厚労省記者クラブにプレスリリースをしていたので、朝日新聞の記者が申し入れに取材で同行してくれました。

 

 団交申し入れの内容は、組合員である谷口さんの2023年度以降の世田谷区史編さん委員委嘱と区史執筆に関わる著作権の扱いについての話し合い継続の要求です。世田谷区との話し合いは2月28日に一度開かれましたが、それ以降、一方的に打ち切られています。話し合いを拒否されたまま、契約期限の3月31日をむかえ、著作権譲渡、著作人格権不行使の契約に承諾しなかったこと等を理由に、谷口さんは契約打ち切りとなりました。出版ネッツはその後、東京都労働委員会に不当労働行為救済の申し立てをしています(https://setagayakushi-chosakuken.hatenablog.com/entry/2023/07/21/180428)。

それと並行して、自主的に団交をするようにと、これまで4月5日と4月21日に申し入れをしていますが、拒否され続けています。

 

〇区長室秘書課担当係長に団交申入書と賛同者一覧を手渡す

 

 7月21日の申し入れでは、保坂世田谷区長は留守とのことで、区長室秘書課担当係長が対応しました。私たちは団交申入書を渡し、トラブル対策チームのメンバーが「都労委は行われているが、当事者同士の話し合いで解決することが一番である」と述べました。また、「世田谷区史編さんにおける『著作者人格権の不行使』問題についての声明」と賛同者一覧を渡し、「7月15日に行われたシンポジウム『歴史研究と著作権法―世田谷区史編さん問題から考える―』には100人以上が集まり、著作権法の専門家、歴史研究者、労働組合員の立場から世田谷区に対する抗議の声が上がった。また、参加した世田谷区民からも世田谷区は話し合いをして解決してほしいとの声が上がっている」と話しました。

 

〇区長が約束した「選挙が終わったら対応する」への返事を求めて

 

 私(広浜)からは「4月に出版ネッツが行った区庁舎前の抗議行動の後、昼食を食べに入ったカフェで保坂区長にお会いした。区長は選挙期間中だったのでたすき掛けをし、食事も終わったようで歓談されていたので、私たち組合員4人で話しかけ、『区史編さん問題について話し合いをして解決してほしい』と話し、区長は『わかりました』と言っていた。が、その後区長へのメールで質問しても、区長ではない方が返信してきて回答できない旨を伝えてきた。区長に直接話したことをメールにも書いたのに、区長へ出したメールに別の人が返信してきたことも納得できない。私自身も労働運動を20年近くやってきていて、保坂区長にはいろいろな集会でお見かけしたこともあった。保坂区長には注目していたし、期待もしてきた。リーダーシップを持ってこの問題に取り組んで頂きたい」と話しました。

 

 谷口さんは「自分は熱意を持って世田谷区史を研究してきた。これまで何年も調査をしてきてこれから執筆というときに契約打ち切りを言い渡された。調査・研究の成果を区史に活かしたい。このまま区史に関われないのは、区にとっても区民にとってもマイナスとなる」「ネッツメンバーだけでなく、選挙期間中に保坂区長に会って『区史編さん問題を解決してほしい』と言ってくれた区民の支援者がいた。その方には区長は『選挙が終わってから対応する』と回答したそうなので、ぜひ区長からその後どうなったかをお聞きしたい」と話されました。秘書課担当係長は「皆さんのお話は区長に伝えます」と答えていました。

 

〇解決が長引くことは、世田谷区民にとってもマイナス

 

 次に区史編さんの担当部署に行き、政策経営部長にお会いしました。これまでは門前払い的な対応だったらしいですが、今回は、4月から新たな担当者が赴任したとのことで、応接室に通され、そこで話をしました。

 私たちは秘書課担当係長に話したのとほぼ同じ内容のことを話し、「都労委で長引かせるのは賢明ではない。話し合いで解決してほしい」と話しましたが、政策経営部長は「自分だけでは回答しかねる。弁護士とも相談し、申入書に書いてある期日までには回答する」と答えました。

 

 谷口さんは日本中世史の研究者で、世田谷を支配した吉良氏についての唯一の専門家です。谷口さんを区史執筆から排除してどんな区史ができ上がるのでしょうか。谷口さんご自身が話されていたように、この問題が長引けば、世田谷区民にとってもマイナスとなります。「自分の書いた著作物に責任を持ちたい」という歴史研究者として真っ当な主張をした人の契約打ち切りに対し、他の歴史研究者からも、著作権専門家からも労働組合からも世田谷区民からも、多くの抗議の声が上がっています。

 保坂世田谷区長、政策経営部長の誠実な回答を望みます。

                                 (広浜綾子)

 

【追記】

7月28日、世田谷区より団体交渉は行わない旨の回答が届いた。「東京都労働委員会にて調査を行っている最中なので、調査への対応に注力したい」という理由が述べられていた。