御所巻(ごしょまき)―世田谷区史編さん問題―

御所巻とは、中世の異議申し立て方法のことを言います。世田谷区による区史編さん委員へのパワハラと著作権の問題についてのブログです。出版ネッツのメンバーが運営しています。

11月6日都労委第3回調査報告 ~組合側、話し合いでの解決を提案~

 11月6日、東京都労働委員会で第3回調査が行われました。これに先立つ10月30日、世田谷区側が「準備書面1」を提出していました。主な内容は、次のとおりです。

①    区史編さん委員の任期は「区史編さんの終了まで」
 谷口さんへの区史編さん委員委嘱状は、当初、「区史編さんが終了する日が属する年度末まで」となっていました(2017年6月1日付)が、2022年、区史編さん委員会の再編に伴い、「1年ごとに委員の任期が更新される」と変更されました。組合側は、「任期を1年に短縮することの合理性はあるか。契約内容の変更には合意が必要であるが、いつどのように合意が成立したのか」と問うていました。
 これに対する区の主張は、「『編さん終了まで委嘱』の運用は、区史編さん委員会再編での変更はない」というもの。谷口さんには区史ができるまで委員を続ける期待権があることを、区側が認めたことになります。

②    委員を委嘱しなかったのは「著作権をめぐる条件に関して合意形成できなかったから」
 では、2023年度の委員委嘱をしなかった理由は何か。区側は、「著作権をめぐる諸条件に関して合意形成できなかったから」と主張しています。しかし、「著作権をめぐる諸条件」の合意形成に向けての話し合いは、2023年2月28日の1回しか行われていません。話し合い続行を望む組合側に対し、一方的に話し合いを打ち切ってきたのは区側です。話し合いを積み重ねれば合意形成する可能性は十分にあったし、今でもあるのです。

③    区史編さん委員会は外部機関!?
 労働委員会では、谷口さん(区史編さん委員)は労働組合法上の労働者と言えるかどうかがまず審議されます。「労組法上の労働者性」を判断するうえでは、①事業組織に組み入れられているか、②契約内容が一方的・定型的に決定されているか、③報酬の労務対価性があるか(フリーランスは、「成果」に対する対価を報酬として受け取るとされている)などが検討されます。組合側の「準備書面1」で、私たちはこれらを主張・立証していました。
 これに対する反論として、区は、「①事業組織への組み入れ」を否定するために、区と区史編さん委員会とを切り離すという主張をしてきました。「本件事業は主として各専門委員会及び各委員等の裁量で進められているものであり、その実態は、まさに外部機関への委託または請負にほかならないというべきである」と。しかしこの主張を裏付ける「区と(外部団体である?)編さん委員会との契約書」も「編さん委員会と委員との契約書」も出していません。おそらくないのでしょう。
 これには、私たちも驚きました。なぜなら、区史編さん委員会は、要綱に基づいて区が設置した区の機関であり、だからこそ区が予算をつけ職員を配置し運営しているのです。報酬額など重要事項目も区が決定しています。さらには、本来は区史編さん委員会が決めるはずの原稿の内容にまで区が深く関与し、著作権著作者人格権の扱いも区が決めてしまっているのです。

●11月中に4回目の調査期日を入れてほしいと要望

 組合は早期解決のため、組合側の「準備書面2」を早急に出すので、11月中にもう一度調査期日を入れてほしい、和解での解決を区側に打診してほしいと要望しました。残念ながら調整がつかず、12月に改めて日程調査をすることになりました。

                                 (杉村和美)