御所巻(ごしょまき)―世田谷区史編さん問題―

御所巻とは、中世の異議申し立て方法のことを言います。世田谷区による区史編さん委員へのパワハラと著作権の問題についてのブログです。出版ネッツのメンバーが運営しています。

編さん委員報酬は「給与」だった~第7回都労委調査~

■公益委員、審問に向け「争点」示す

 5月30日、東京都労働委員会で第7回調査が行われました。

 前回調査で世田谷区が和解を蹴ったため、公益委員は、審問手続きに進むため「争点」を提示しました。①区史編さん委員会委員は「労働組合法上の労働者」に当たるか、②谷口さんを委員に委嘱しなかったことは不利益取り扱いに当たるか、③組合の団交申し入れに応じなかった区の対応は、正当な理由のない団交拒否にあたるか、の3点です。

 これに先立って、組合側は準備書面(3)を提出してありました。

 

■組合、源泉徴収票で「労働者性」裏付け

 準備書面(3)での組合側の主張で特に重要なのは、区史編さん委員は特別職非常勤公務員であり「労組法上の労働者性」があることを証拠をもって裏付けた点です。

 組合は、区史編さん委員は特別職非常勤公務員(専門的な知識経験に基づき助言、調査のほか総務省令で定める事務を行う職)にあたると主張していました。一方、区は、区史編さん委員会は区の執行機関でも、条例に基づいて設置された附属機関でもないので、委員は特別職非常勤公務員ではなく個人事業主であると主張してきました。

 今回、区のこの主張を覆すような証拠を、組合側が提出しました。区が作成した谷口さんの「源泉徴収票」です。委員報酬は「給与・賞与」と記載され、給与所得に対応する源泉額(3%)が引かれています。「給与」が支払われるのは、特別職非常勤も含め区の職員に対してです。仮に区史編さん委員会が「外部機関」や「私的諮問機関」で委員が個人事業主であるなら、「給与」を支払うことには法令上の根拠がなく、「謝金」等で支払わなければならないのです。源泉額も変わってきます。ところが区は、決裁文書でも源泉徴収票でも、委員の報酬を「給与」として扱っていたことがわかりました。この事実は、区史編さん委員は特別職非常勤にあたると区も考えていた証拠です。特別職非常勤公務員には、労組法が適用されます。

組合側は、谷口さんら区史編さん委員は、①事業組織への組み入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性が明らかであり、その他の要素も含め総合的に見て「労組法上の労働者性」が優に認められると主張。とりわけ、区が作成した源泉徴収票によって、③が裏付けられたことには決定的意味があると述べました。

 

■区側「反論を出すのに2か月ほしい」

 世田谷区は、組合側準備書面(3)に反論したいと述べました。しかも、書面提出に2カ月も必要と言うのです。区史編さん委員は「労組法上の労働者」ではないから却下してほしいという区の主張は、大きく揺らぎ始めたようです。

 区側の準備書面提出期日は7月末です。組合は、反論書面を待つ間に、世田谷区が谷口さんに対して行った行為(著作者人格権不行使の強要、委員委嘱の打ち切りなど)がいかに不当・不条理であるかを、さらに社会的に問うていきたいと考えています。

(杉村和美)